【コラム】面接のプロ

 
人事・組織の分野には企業の人事部長だけでなく、人事コンサルタント、研究者など人材採用を専門とする方が大勢いらっしゃいますが、専門家でありながらご自身の組織内の採用をうまくやっているか、というと実はそうでもないことが多いものです。
とりわけ採用の合否を判断する面接に関しては、理論(知っていること)と実践(できること)に大きな隔たりを感じます。私自身、綿密で慎重な手順と最高の集中力を持って面接に臨みますが、最後は「神に祈るような気持ち」で採用通知にサインします。もしここに、採用面接で必ず100%正しく評価できる人がいたとすると、その人は年収で3000万円以上の価値があるのではないでしょうか。

それはおそらく、人と人とが限られた時間(通常60分以内)で向き合い、会話を通して人の能力や可能性を判断する「面接」というものに無理があるのだと思います。その要因として、具体的には次のようなものが挙げられます。

  1. 面接官・応募者双方の気分・疲労状態による影響
  2. 面接官の相性(好き嫌い)による影響
  3. 応募者が経験してきた「環境」と採用企業の「環境」の違いによる影響
    →組織の大きさ・上司や部下のタイプ・人数・ビジネスや顧客等
  4. ビジョンなどの価値観摺り合せ不足による影響
  5. 応募者よりも面接官の総合的な能力が低いことによる影響

これらの根本的な問題を克服し、より採用成功の確率を高くするにはどうすれば良いのでしょうか。
その一つが、入社後の評価を採用面接に活かすことです。

期待を持って入社した人が思いのほか仕事ができない、なぜだろう?と悩まれたことがあると思います。入社後の出来不出来は、具体的な行動で明らかにし、採用選考時点でなぜ分からなかったのか、採用選考結果とのギャップがなぜ起こったのか、その手順や面接での会話を丁寧に分析してみることがとても大切です。大部分が、「質問の掘り下げが浅かった」というところに集約できるのですが、例えば、「彼の成果は、大企業で様々なサポート体制が整備されていたからだったのだろう。職場環境や体制をもっと詳しく確認すべきだった。」とか「一番難しかった顧客のクレーム対応時のことを誰のサポートを受けておこなったのかをもっと具体的に質問しておけばよかった。」などの改善点があがってきます。これを丁寧に繰り返すことで、経営者や人事担当者の方のみならず、採用面接官をおこなう現場管理職の方々の面接スキルも飛躍的に向上するのです。理論を学ぶことも大切ですが、「目利き」の本質は実際に「部下を採用して、うまく成果が出せずに苦労する」という痛い経験からしか学べないのだと思います。

自ら実践し、効果を上げてお客様にも提案しているもう一つに、適性検査の有効活用があります。最近は、適性検査ツールもその数が増え、使い勝手や信頼性も比較検討できるようになりました。同時に、いわゆる「対策本」も随分出回り、受検者が恣意的に回答するケースもあるようで、ツールを選ぶ上でのデータの信憑性もとても重要になってきました。また、こうしたデータは、入社後も採用選考のレビューのために入社後も頻繁に使いますので、電子データで保存でき、加工しやすいものが便利です。
さて、適性検査データを選考プロセスのどこでどのように使うか、ですが、一般的には、コストと効果の観点から、最終面接やその手前の人事面接で使うことが多いです。

限られた時間と集中力の中で、どの点の確認に力を注ぐべきかどうかが明確になり、大変効率的ですし、そのようなデータを参考にしながら、過去の仕事振りを事実ベースで確認すると多角的な評価ができ、とても有効です。
更に、入社後の評価結果を繰り返し検証して分かってきたことがあります。それは、実際に働いてみないと分からない部分が、意外と適性検査結果に表れていることです。

例えば、多くのデータを加工したり、重要な情報を扱ったりする仕事では、「慎重性」が基本の資質となります。たとえ、他の資質が高く、別の仕事での実績が優れていても、慎重性が低い人を採用するリスクは大変高いと言えます。このように、適性検査から入手できる情報を理解し、面接と併せてうまく活用することで、かなり採用成功の確率を向上させることができるのです。

樋口弘和

適性検査CUBIC TRIUMPH Ver.Ⅱ ページ上部に戻る

適性検査CUBIC TRIUMPHのトップに戻る