【コラム】ナチュラルリーダー

私たちが働く職場は、個人の価値観と能力が役割(組織)の中でいかに効率よく発揮されるかがとても大切であり、そのためには対人折衝能力、わかりやすくいうと社会性やコミュニケーション能力が求められます。
これは仕事の基礎である指示を理解することから始まって、ホウレンソウ、相手の気持ちを汲み取ることなど段々と難しくなり、センスもさることながら、職場での経験を通じて学んでいくことが多いと思います。
この一連の能力(スキル)のなかで、最も難しく、個人の能力の最たる違いがでるのが、リーダーシップだと思います。
これは天性のものと、人生の中で苦労して身につけたものの合作かもしれませんが、その人の「器」に近い定義であり、選ばれた人だけが社会で発揮できる独特のものであります。
私は早稲田大学ラグビー蹴球部の組織分析をお手伝いする過程で、個人適性検査の結果を分析しながら、リーダーシップについて面白いことに気がつきました。
例えば、清宮ワセダの初代主将を務め、現在はシブヤ大学学長として活躍する左京さんです。
彼の個人適性データは、所謂リーダーのイメージとは程遠いものでした。
内閉的で、快活さ、行動力は低い一方で、物事を深く考える客観性はとても高いタイプです。ところが、彼はレギュラー経験があまり豊富でなかったにもかかわらず、同期、OBから推されて主将となったのです。
彼と付き合ってもう数年経ちますが、確かに人前で熱く上手にスピーチをするタイプではありませんし、むしろ、初対面の場では大人しい物静かな印象です。ところが、その心にはとても熱いものがあり、接していて自然に応援したくなるようなエネルギーを会うたびに感じるのです。
個人適性データでは表れない一番の違いは何か?
彼を見ていてわかったのは、その違いは「より大きな社会、国に役に立ちたい」という発想の大きさと実行力だということです。
これは、私の言葉で言えば、高度な向上心と責任感が結びついた本物のリーダーだけが持ちうる素養といえるでしょう。
もう一人、現在監督をなさっている中竹さんにも同じような傾向が見受けられます。
私の想像に過ぎませんが、彼を動かしているのは「早稲田をクラブとして強くしたい。あるいは、スポーツと社会との接点、企業CSRとの関係性を強くしたい。」という強い思いであり、自分の沽券やプライドにはほとんどこだわらない方なのではないかな、と思います。
彼の個人適性データを見ると、従順性という組織適合性が極めて低く、上司としては扱いにくいタイプである可能性があります。
ところが、外野から拝見していると、彼はリーダーとしてゴールへの戦略をしっかり持ち、それをきちんと管理しながらも、権限委譲を思いきって進めており、各コーチやスタッフからの具申やアイデア、批判に対してとてもオープンなようです。
彼の場合、自分の思いを達成することを一番に考えているため、その他の細かいことは気にしない(見えない)のではないでしょうか。彼も左京さん同様、決して高校時代から有名選手であったわけではないですが、推されて主将になっています。
彼らのような生まれついて人の上に立つ素養を持った人をサントリーの清宮さんは、「ナチュラルリーダー」と表現していました。
実は、企業や組織が最も大切にすべき人材が、このナチュラルリーダーだと思います。企業の次世代幹部育成のお手伝いをしていても、最後にトップに選ばれる人は、必ずナチュラルリーダーです。
逆に、こういう人材がいない組織や企業は、大いに不幸だと思います。
樋口弘和

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